学校薬剤師とは
学校薬剤師は、学校医・学校歯科医とあわせて「学校三師」と呼ばれる学校保健の専門職です。幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校に置かれ、ふだんは薬局や病院などで働く薬剤師が、非常勤で担当校の保健管理にあたります。
仕事の中心は、学校環境衛生基準に基づく検査と、その結果に基づく指導助言です。教室の二酸化炭素濃度、照度、騒音、飲料水の残留塩素、プールの水質などを測り、基準に照らして判定し、改善を提案します。加えて、薬物乱用防止教室や医薬品の正しい使い方の授業、保健室や理科室の医薬品・薬品の管理への助言、健康相談なども担います。
法的な位置づけ
設置の根拠は学校保健安全法第23条です。
学校には、学校医を置くものとする。
学校保健安全法 第23条第1項〜第3項
2 大学以外の学校には、学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする。
3 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、それぞれ医師、歯科医師又は薬剤師のうちから、任命し、又は委嘱する。
同条第4項は、学校医・学校歯科医・学校薬剤師が「学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する」と定め、第5項で職務執行の準則を文部科学省令で定めるとしています。これが施行規則第24条です。
環境衛生については、同法第6条が文部科学大臣に学校環境衛生基準の策定を求め、学校の設置者には基準に照らした適切な環境の維持を、校長には基準に照らして適正を欠く事項があれば遅滞なく改善措置を講じる(できないときは設置者に申し出る)ことを求めています。
職務執行の準則(施行規則第24条)
学校薬剤師の職務は、学校保健安全法施行規則第24条第1項に次のとおり列挙されています。
| 号 | 職務 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1 | 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること | 年間の検査日程の提案、学校保健委員会での報告 |
| 2 | 環境衛生検査に従事すること | 定期・臨時の環境衛生検査(検査一覧) |
| 3 | 学校の環境衛生の維持及び改善に関し、必要な指導及び助言を行うこと | 換気方法、照明更新、受水槽管理、日常点検の指導 |
| 4 | 法第8条の健康相談に従事すること | 医薬品・サプリメント・アレルギー等の相談 |
| 5 | 法第9条の保健指導に従事すること | 服薬が必要な児童生徒等への指導 |
| 6 | 学校において使用する医薬品、毒物、劇物並びに保健管理に必要な用具及び材料の管理に関し必要な指導及び助言を行い、及びこれらのものについて必要に応じ試験、検査又は鑑定を行うこと | 保健室の医薬品、理科室の毒劇物の保管・廃棄への助言 |
| 7 | 前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する技術及び指導に従事すること | 薬物乱用防止教室、医薬品教育、感染症対策の助言 |
また第24条第2項により、職務に従事したときは学校薬剤師執務記録簿に概要を記入して校長に提出します。
身分と待遇
- 公立学校:設置者(教育委員会)が委嘱。多くの自治体で地方公務員法第3条第3項第3号の非常勤の特別職として扱われます。
- 国立学校:国立大学法人等が委嘱(附属学校等)。
- 私立学校:学校法人等が委嘱・契約。
報酬額や支払い方法(年額・回数払い・検査ごと)は設置者によって大きく異なり、全国一律の基準はありません。公立学校の学校薬剤師が公務上災害を受けたときは、公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する法律による補償の対象となります。
具体的な報酬・委嘱期間・検査機器の貸与の有無などは、地域の学校薬剤師会または教育委員会に確認してください。
数字で見る学校薬剤師
文部科学省の「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会」で示された2024年度のデータ(薬事日報の報道による)では、学校薬剤師の配置状況は次のとおりです。
| 学校種 | 学校数 | 学校薬剤師数 |
|---|---|---|
| 小学校 | 18,822 | 18,581 |
| 中学校 | 9,882 | 9,569 |
| 高等学校 | 4,774 | 4,606 |
学校薬剤師の学校訪問は年平均4.5回とされ、学校医より多いと報じられています。1人の薬剤師が複数校を担当する例も多く、配置の数字は「兼務」を含む点に注意が必要です。
歴史
- 1930北海道小樽市の小学校で誤飲事故
小学校で、かぜ薬と誤って消毒薬の昇汞(塩化第二水銀)を児童に服用させ、死亡に至った事故が起きました。学校で医薬品を扱う専門家の必要性が強く認識されます。
- 1931小樽市で初の学校薬剤師委嘱
事故を受け、小樽市が全市の小学校に薬剤師を委嘱。これが学校薬剤師の始まりとされます。
- 1958学校保健法の制定
学校薬剤師が法律に位置づけられ、大学以外の学校への設置が定められました。
- 2009学校保健安全法へ改正・改題、学校環境衛生基準の告示
学校環境衛生基準(平成21年文部科学省告示第60号)が法に基づく基準となり、学校薬剤師の職務に健康相談・保健指導が加わりました。
- 2012中学校で「医薬品の正しい使い方」が全面実施
学習指導要領の改訂により医薬品教育が本格化し、学校薬剤師の授業協力が広がります。
- 2022学校環境衛生基準の改正(R4.4.1施行)
温度の下限を17℃→18℃、一酸化炭素を10ppm→6ppmに見直し。
- 2026エチルベンゼンの基準強化(R8.4.1施行)
3800→370μg/㎥へ。容器採取法の削除も。改正の経緯
これからの論点
文部科学省は2025年から「学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会」を開催し、2026年9月11日に中間まとめを公表しました。健康診断の在り方が中心ですが、学校三師の業務負担や担い手の確保も議論の背景にあります。ニュース解説
一方で、10代の市販薬のオーバードーズ、化学物質過敏への配慮、熱中症・感染症対策、GIGAスクールで増えた画面の視環境など、学校薬剤師の専門性が求められる場面はむしろ広がっています。
出典・参考資料
- 学校保健安全法(昭和33年法律第56号)(e-Gov法令検索)
- 学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)(e-Gov法令検索)
- 公立学校の学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の公務災害補償に関する法律(e-Gov法令検索)
- 学校にいる薬剤師・学校薬剤師(日本薬剤師会)
- 【文科省検討会】学校薬剤師の訪問4.5回‐学校医よりも大幅に多く(2026年5月22日)(薬事日報)
- 学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会(文部科学省)
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